オーストラリアの科学技術政策では、クオリティの高い公共研究基盤を保持、民間による更なる技術革新の奨励、そして基礎研究を最大限に商業化することに焦点が当てられてきた。
オーストラリアは質の高い人材、高等教育レベル、防府な天然資源や生物多様性、透明性の高い法規制などの観点から、バイオ・医薬産業に最適な国のひとつと評価され、重要な研究開発先として拠点を構えているグローバル製薬企業もある。
ターブンル政権は2015年12月7日、国内のイノベーション力向上を目的に、24項目に上る「イノベーション&サイエンス・アジェンダ(National Innovation & Science Agenda, NISA)」を発表した(参照)。ビジネスの成長及び雇用を促進し、オーストラリアが世界的に革新的な国だと認知される重要な政策としてNISAを位置付けている。 首相はオーストラリアの経済成長の基盤として、イノベーションを掲げており、産学パートナーシップ・サポートのための共同事業への補助金やR&Dの商業化などイノベーション刺激策に対し、今後4年間に約11億ドルを拠出方針を打ち出した。NISAにはスタートアップ企業への投資額の20%を控除する税制優遇策や科学産業研究機構(CSIRO)や国内大学が開発した技術の商業化を進めるための2億ドル規模のイノベーション基金設立なども含まれた。また競争力を有する6分野については、Industry Growth Centres Initativeが立ち上げられ、企業のネットワーク形成や成長を支援するための産業成長センターがそれぞれ設立され、その中に医療技術・医薬品- Medical Technologies and Pharmaceuticals Growth Centre (MTP Connect) も含まれた。
Medical Research Future Fund (MRFF)-医学研究将来基金の設立が14/15年度予算案に盛り込まれ、2015年8月にMedical Research Future Fund Act 2015、またその関連法が裁可された。また2016年11月にAustralian Medical Research and Innovation Strategy 2016-21とAustralian Medical Research and Innovation Priorities 2016-18が政府より発表された(参照)2021年までに200億ドルの基金を目指す。MRFFはヘルスケア向上のため政府、大学、研究機関、ヘルスケア専門家、産業またコミュニティのパートナーシップを強化し、医学研究とトランスレーショナルリサーチ促進をめざすものである。
オーストラリアのバイオ医薬産業イノベーションは世界で5位と位置付けられている。(参照:2016 Scientific American Worldview Overall Scores) AusBiotechの調査によると、ライフサイエンス・セクターでは1,654組織があり、23万人以上を雇用。53%にあたる876社(325社:医療機器・デジタルヘルス、281社:製薬企業、270社:食品・アグリ産業)が企業ベースである。(出展:AusBiotech, Australia’s Life Sciences Sector Snapshot 2017)
2017年12月末における140社のライフサイエンス上場企業の株式時価総額は1,070億ドルであった。ライフサイエンス上場企業による2017年中の資金調達総額は8億4,200万ドルであった。(出展:Bioshares, Edition 727)
オーストラリアのバイオ医薬企業は、製造や販売を含む商業化の段階になると、海外企業との提携を通じて欧米市場で事業展開を行うケースが多い。資本市場環境、人口2,400万人強と国内市場規模が限られており、多国籍企業との提携を余儀なくされることが多い。海外企業とのアライアンスは戦略的提携、共同研究、委託製造、委託研究、ライセンス契約、合弁会社設立など様々な形態が挙げられる。
オーストラリアのバイオ医薬産業界で海外企業と戦略的提携を結ぶ事例が増えており、今後も様々な企業間、また産学官における提携が進むと予想される。
近年日本でも期待と注目が集まる、幹細胞治療や再生医療の分野において、日豪の交流が盛んである。世界に先駆けてiPS治療および再生医療の産業化を牽引する日本と、革新的な治療法や製造方法の研究開発が盛んなオーストラリアとはシナジーが強く、アカデミア、産業双方での人的な交流や知識の共有が積極的に行われている。
2017年10月、再生医療イノベーションフォーラム(FIRM) とオーストラリアバイオ産業団体(AusBiotech)は再生医療および細胞医療の促進を目的に両社連携に関わる覚書を締結した。
オーストラリアのバイオ医薬企業は、製造や販売を含む商業化の段階になると、海外企業との提携を通じて欧米市場で事業展開を行うケースが多い。資本市場環境、人口2,400万人強と国内市場規模が限られており、多国籍企業との提携を余儀なくされることが多い。海外企業とのアライアンスは戦略的提携、共同研究、委託製造、委託研究、ライセンス契約、合弁会社設立など様々な形態が挙げられる。
オーストラリアのバイオ医薬産業界で海外企業と戦略的提携を結ぶ事例が増えており、今後も様々な企業間、また産学官における提携が進むと予想される。
オーストラリアはまた、迅速で質の高い臨床試験の実施地としても注目を集めている。製薬、バイオテクノロジー、医療機器などの分野で毎年約1,000の新しい治験がオーストラリアで開始されていると言われており、それらが豪州にもたらす投資額は10億豪ドル以上に上る。(出展:Australian Industry Report 2014) 欧米のバイオ製薬企業らによる第一相、第二相までの早期試験の実施が中心。 オーストラリアが選ばれる主な理由として、
などが挙げられる。日本のバイオ・製薬産業界でも豪州での治験実施について検討する企業が増えており、今後、日豪での提携等が増加することが予想される。
豪州政府
産業団体