オーストラリア産の牛肉は圧倒的な質の高さと安全性で、国際的に高く評価されています。
食品のトレーサビリティにおいても「牧草地から食卓まで」をスローガンに、食肉産業全体において安心のシステムを確立しています。
オーストラリアは生体牛と牛肉の両方を輸出しており、世界の赤身肉の供給に大きく貢献しています。牛肉の輸出量では世界第2位の輸出国となっています。 主な輸出先は日本や米国のほか、韓国、中国、台湾、インドネシアなどのアジア市場、そしてEUなどです。
オーストラリアの草地面積は広大で、肉牛生産は放牧によるものが大半です。
気象条件が地域によって異なるため、それぞれの地域特性に合った40以上の品種の生産が行われています。すべての生産過程において安全性の確保が最重要課題として位置づけられており、最高級品・特産品から牧草飼育牛、穀物肥育牛、オーガニック牛、ハラール牛、そしてハンバーガー用の大口注文に至るまで、あらゆる市場や嗜好に対応した製品を輸出しています。
オーストラリアの牛肉産業は、わが国が誇る牧草飼育生産システムに加え、穀類や干草の効率的な活用にも支えられています。また、家畜の遺伝子研究、育種開発、繁殖技術の開発なども積極的におこない、生産能力の向上に努めています。
わが国では官民が協力して厳しい品質保証制度を確立し、食肉の安全性を担保しています。オーストラリア産食肉の品質と安全性に対する世界的な評価を支えているのは、肉牛の放牧地から最終消費者の食卓まで、サプライチェーン全体を俯瞰したトレーサビリティシステムです。
業界団体の豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は、牛肉のサプライチェーンの各段階を網羅する安全プログラムを監督しています。出生時の個体識別から食肉処理、医薬品・農薬管理、家畜輸送・販売システム、食肉の品質・安全管理システムまで、牛肉生産のあらゆる側面を網羅しています。
オーストラリア産牛肉と羊肉の販売促進やPR活動、市場の情報提供は豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)が行っています。 オーストラリアから輸入される牛肉は「グラスフェッド」と呼ばれる牧草飼育で赤身の多いもの、そして、「グレインフェッド」という穀物飼料による肥育です。 穀物価格の変動が肥育頭数に大きな影響を与え、輸出量や価格に影響がでることがあります。 羊肉は世界で最も高品質なものを生産しており、牛肉と同様の安全システムに基づいて管理されています。 その品質から高級レストランでのグルメ食材としての使用量は増加傾向にあります。ジンギスカン用途の需要も根強く、北海道だけではなく日本各地でオーストラリア産ラムは流通しています。
牛肉・羊肉以外にも、豚肉やオーストラリアならではのカンガルー肉などが日本に輸入されています。 豚肉の生産に深刻な影響を与える病気や疫病(口蹄疫、豚コレラ、PMWS(離乳後多臓器性発育不良症候群)など)は存在せず、安全な飼料で肥育された日本規格の豚肉をすでに日本で購入することが可能です。 食肉の中で共役リノール酸含有量が最多で低脂肪・高タンパク・低コレステロールで知られるカンガルー肉、オメガ脂肪酸が豊富で上質な鶏肉のようなワニ肉、超低脂肪・高鉄分のダチョウ肉などがあります。食肉としての認知度はまだまだ低いですが、いずれも健康志向・健康意識が高まっている現在の市場において存在感を見せています。すでに部位ごとの販売に成功しており、健康や流行に敏感な女性消費者層からの支持が増えつつあります。 オーストラリアの食肉はいずれもクリーンな自然環境で、動物にストレスが少なく、病気や疾病がないことが、海外市場で広く支持されている理由の一つです。
わが国においては動物の健康と福祉を支えるバイオセキュリティーについて、畜産事業の不可欠な要素として認識されています。
国内では、口蹄疫や牛海綿状脳症といった牛の主要伝染病は発生しておらず、農業関連の深刻な病害虫被害もありません。国と自治体は畜産業界と連携しながら、動物衛生の高い基準を維持しています。またオーストラリア政府は、数多くの監視施設を設置し、管理体制を強化しています。
オーストラリアは家畜の輸出過程においても、動物福祉の観点を重要視しています。サプライチェーン全体での動物の福祉、管理、トレーサビリティに関する要件と、独立監査の項目が含まれているシステムとなっています。
オーストラリアでは、牛肉産業に関するさまざまな教育や研修を行っています。
わが国の総合大学や技術専門大学では、動物科学、獣医学、食肉加工などの分野で高等教育や職業教育を提供しています。また、牛肉生産に関する研究が農場内外で活発に行われています。
業界団体のMLAはこのような研究開発に投資すると共に、政府機関や各種団体と協力した研究プロジェクトに取り組んでいます。国立科学機関の連邦科学産業研究機構(CSIRO)は、牛肉産業や国内の農業・食品生産に応用できる幅広い研究開発プロジェクトに携わっています 。
オーストラリアの生産者は、生産システム全体を視野に入れた栄養戦略を開発・運用しています。集中ロット給餌、補助給餌、干ばつ時の給餌戦略など、さまざまな手法を取り入れてきました。放し飼いで育てられた牧草飼育牛は 脂身が少なく、健康志向の消費者にとってますます魅力的な存在となっています。